壁面飾りは、介護施設・デイサービスのレクで毎月必ずやってくる仕事です。「今月は何にしよう」と題材を考えるところまでは楽しいのに、いざ作り始めると「思ったより大きくて終わらない」「貼るのはいつも職員だけ」「去年のパーツがどこにあるか分からない」と、毎回同じところでつまずく。この記事では、題材のアイデアそのものよりも一段手前にある「壁面飾りの作り方の型」をまとめました。一度この型を決めてしまえば、翌月からの企画と準備がぐっと軽くなります。
壁面飾りが大変になる3つの理由
うまくいかない壁面には、だいたい共通の原因があります。
- いきなり大きいものを作り始める:全体像が決まらないまま部品を作ると、貼る段階でバランスが合わずに作り直しになります
- 工程が1種類しかない:「ハサミで切る」だけの作業だと、手指が動きにくい方や視力の弱い方が参加できず、結局職員が作ることになります
- 作りっぱなしで保管していない:毎年ゼロから作り直しているので、いつまでも準備時間が減りません
逆に言えば、「①先に設計を決める ②工程を分ける ③保管する」の3つを押さえるだけで、壁面飾りは驚くほどラクになります。
まず決める:大きさと「3層」の構成
大きさの目安
作り始める前に、貼る場所の横幅を測ってメモしておきます。目安として、模造紙は1枚およそ788×1091mm、四つ切り画用紙は約392×542mmです。フロアの主役になる壁面なら模造紙2枚分(横約1.6m)、廊下や玄関わきのちょっとした飾りなら四つ切り1〜2枚分で十分見栄えがします。「大きいほど良い」ではなく、貼る場所に対して余白が2〜3割残るくらいが、いちばんきれいに見えます。
背景・主役・脇役の3層で考える
どんな題材でも、次の3つの層に分けて考えると設計が一気に楽になります。
- 背景(1層目):空や地面の色。模造紙や大きな色画用紙を貼るだけ。作業は単純で、大人数で一気に片付きます
- 主役(2層目):木・花・行事のモチーフなど、いちばん目立つもの。1〜2個だけ作ります
- 脇役(3層目):葉っぱ、実、雪、鳥など「たくさん必要な小さいパーツ」。ここが参加者全員の出番になります
この3層に分けると、「誰が何を作るか」が自動的に決まります。とくに3層目を多めに設計しておくのがコツで、パーツが30個必要なら、20人で1人2個作れば余裕を持って完成します。
型紙は1つだけ作って使い回す
同じ形のパーツをたくさん作るとき、毎回ゼロから描いていては時間がいくらあっても足りません。厚紙や空き箱の段ボールで型紙を1つだけ作り、あとはそれをなぞってもらいます。
- 紙を半分に折って型紙を当てて切ると、葉・ちょうちょ・ハートなど左右対称のものがきれいに揃います
- 型紙は少し厚みのある素材にすると、手が震えても鉛筆が滑らず、ご本人だけでなぞれます
- 切るのが難しい方には、こちらで切った紙を渡して「貼る」「色を塗る」工程から参加してもらいます
型紙は題材ごとに封筒に入れて残しておけば、翌年そのまま使えます。これが翌年の準備時間を半分にする一番効く工夫です。
工程を分けて「1人1パーツ」に分解する
壁面飾りを45分のレク1回で完成させようとすると無理が出ます。2〜3回に分けて、1回あたり1工程にしましょう。
- 1回目(45分):脇役パーツづくり。全員で葉っぱや花を量産します
- 2回目(45分):主役づくりと色つけ。手先の器用な方の見せ場です
- 3回目(30分):みんなで貼って完成。貼る場所を指さして決めてもらうだけでも立派な参加です
また、同じパーツづくりでも難易度を3段階用意しておくと、要介護度の違う方が同じテーブルにいても手が止まりません。
- やさしい:ちぎる、丸める、シールを貼る(力の加減がいらない・失敗がない)
- ふつう:型紙をなぞる、のりで貼る、色を塗る
- しっかり:ハサミで細かく切る、折り紙を折る、文字を書く
声かけの例:「この葉っぱ、あと10枚ほしいんです。手伝っていただけませんか」。「やってみましょう」より「手伝ってください」のほうが、役割が伝わって手が動きます。
壁を傷めない貼り方・外し方
作品より先に、壁のほうを傷めてしまっては元も子もありません。
- マスキングテープを下地に:壁にマスキングテープを貼り、その上から両面テープや養生テープで留めると、剥がすときに壁紙が持っていかれにくくなります
- 粘着ゴム(ひっつき虫など):小さいパーツの微調整に便利。跡が残りにくく、位置を何度でも直せます
- 掲示板・パーテーションを使う:画鋲が使える面があるなら、そこを定位置にするのが一番安全です
- 貼る前に床に並べて全体を確認します。写真を1枚撮っておくと、来年同じ配置を再現できます
保管と使い回しで、来年の自分を助ける
外した壁面は、丸めずに平らなまましまうのが鉄則です。折り目がつくと翌年そのまま使えません。
- 大きいパーツはクリアファイルや紙袋に平置き、小さいパーツは月ごとに封筒へ
- 封筒の表に「11月 紅葉の木 パーツ40枚 型紙あり」と書いておく
- 完成写真を印刷して一緒に入れておくと、翌年の説明がその1枚で済みます
背景と型紙さえ残っていれば、翌年は「脇役パーツを作り直すだけ」で新しい壁面になります。同じ題材でも色を変える、大きさを変えるだけで印象は十分変わります。
季節の題材カレンダー(10月〜1月)
迷ったときの定番を、月ごとに挙げておきます。
- 10月:どんぐり・きのこ・落ち葉・かぼちゃ・秋桜。実りの色(茶・橙・黄)でまとめると失敗しません
- 11月:紅葉・いちょう・菊・七五三。1本の大きな木に全員の葉を貼る共同制作が定番です
- 12月:クリスマスツリー・雪の結晶・ポインセチア・柊。折り紙を折って切る雪の結晶は、開いた瞬間に歓声が上がります
- 1月:干支・鏡餅・梅・凧・羽子板。2027年は未(ひつじ)年です。白い花紙を丸めて貼ると、ふわふわの羊がすぐできます
月別のレクや工作のアイデアは、9月のレクアイデア、秋の工作レク・壁面飾りアイデアにもまとめています。
それでも準備の時間が取れない月に
ここまで「型を決めれば楽になる」と書いてきましたが、それでも行事や入退所が重なって、下ごしらえの時間がまったく取れない月はあります。そういう月のために、ELLの介護レクキットのように材料・道具・大きな文字の説明書が1人分ずつ袋に分かれて届くものを、月に1回の「保険」として組み込んでおく施設さまもあります。壁面は自分たちで作る月と、キットで個人作品を作る月を交互にすると、企画の負担が平らになります。実際の制作の様子は制作風景でご覧いただけます。
まとめ:壁面は「設計・分担・保管」の3つで決まる
壁面飾りの出来を左右するのは、絵の上手さではありません。貼る場所を測り、3層に分け、工程を分担し、来年のために保管する。この流れを一度作ってしまえば、毎月の壁面は「考える仕事」から「回す仕事」に変わります。まずは今月の壁面から、型紙を1枚残すところだけでも始めてみてください。
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